ギター教則本「菰口雄矢のアドヴァンスド・リードアプローチ」について

今回のお題は若手実力派ギタリストの菰口雄矢さんによる教則本についてです。

菰口さんのプレイスタイルを大雑把に言うと、ハードロックやヘビーメタル的な奏法を用いてテクニカルでハードなフュージョンやプログレメタル的な曲を弾くタイプのギタリストで、その点では藤岡幹大さんと共通する部分があるモノの、両者を比較すると藤岡さんの方がロックっぽいプレイスタイルが強く出ていると言うか、菰口さんの方が意図的に”イカにもヘビメタ”なギタープレイ(←単純なスケールやアルペジオの上昇および下降を延々と限界速度で弾くパターンとか)を避けている風にも見えます。

また、藤岡さんの演奏からは弛まぬ努力のアトが感じられるのに対し、菰口さんの演奏からはあまりソレ等が感じられず非体育会系な印象を受けます(←アクマで個人の感想である上に、ソレが良い事か悪い事かは別の話ですし、実際にはお二人とも当然のように凄まじい努力をされているでしょうけど)。


前置きが長くなったんで本題に入りますと、お題に書いた教則本「菰口雄矢のアドヴァンスド・リードアプローチ」は菰口さんにとって二冊目の教則本であり、内容は「色々なコード進行上で菰口さんが”スケールアプローチ”と”コードアプローチ”の二つの異なるアプローチに沿って模範演奏する」と言うモノで、その模範演奏は菰口さんらしいヒネリの利いたフィンガリングパターンが満載で相当に弾き応えがあり、この教則本の主な購読者層であると思われる「いつもはハードロック・ヘビーメタルばかりを弾いているけど、テクニカルなフュージョンっぽい演奏にも興味があるギター弾き(≒ヤンギの愛読者層)」にとっては馴染みの無いフレーズやパターンが多く非常に良いトレーニングになると思います。

と、ココまでは良いんですが、この教則本にはちょっと問題もあって、それは
掲載されているTAB譜に書かれてある指示やポジション等が恐らく菰口さんが実際弾いたモノとは少し異なっている事です。

具体的に言うとまず一つ目は、ハンマリングやプリングを絡めているであろうフレーズを全てフルピッキングで弾くように書かれている点です。一例を挙げれば、

Lead-02a(10ページ目)=4小節目の最後(CDタイム=0:10辺り)のフレーズ
Lead-03b(13ページ目)=冒頭からの6連フレーズ
Lead-12a(32ページ目)=2小節のフレーズ全般(なお、ココでは譜割り(リズム)も明らかに間違ってて、最後から5つ目の3弦・10Fの音は記譜よりも少し音価が長い。ちなみにこのフレーズの後半は7小節目の小スウィープフレーズと基本的に同一のパターン)

パッと目についただけでも↑だけありますし、また、ポジションを間違って記載している(であろう)せいで実際よりもヤタラと難しくなっている箇所も少し挙げてみると

Lead-04a(14ページ目)=最後の小節の高速スウィープでの後半、楽譜で言うと2拍目のところで1本の弦につき2音ずつ弾くように記譜されていますが、このクソ速いフレーズでこれは余りにも非効率的なんで、おそらく菰口さんは↓みたいに弾いている筈です

Lead-06b(19ページ目)=最初の小節の四拍目ですが、ココでもまた直近↑の例のように「1本つの弦につき2音ずつ弾くように記譜されて」いますが、これも余りに非効率的ですし、BPM=130ってテンポを勘案してみても無理矢理すぎますんで、恐らくこう弾いている筈です↓


さて、ココまでこの教則本の「は?」な部分をザッと見てきましたが、この他にもTABと五線譜の音が違う例がある(=最初の曲であるLead-01aの6小節目の10音目、4弦18Fの「G♯」の音が五線譜では「A」と記載されてる)など、単純な誤植が目につきます。

ただ、恐らくこれ等の事は菰口さんの責任ではなく、この教則本の共著者であり菰口さんの模範演奏を採譜した宮脇俊郎さん(や他にチェックしたであろう出版社の人たち)によるミスだと思われます。
・・・でも、宮脇さんも自分で譜面化したモノを自分自身で一度弾いてみたら「このポジションはちょっとナシだよなぁ…」と分かると思うんですけどねぇ・・・。


とまぁ色々と気付いた点を指摘して来ましたが、この教則本自体は物凄く有用である事に変わりないと思いますし、ハッキリ言っちゃうと、先ほど指摘したオカシなポジションなんかは↓
「あれ?このTABってオカシクねぇ?」
↑と気付く(気付ける)くらいのレベルのギター弾きじゃなけりゃお呼びでないくらいのレベルの高い教則本だとも思いますし、「菰口さんのような演奏が出来るようになりたい!」と言う人には、菰口さんが参加しているCDを色々と購入して聴き漁るよりよりも、個々の曲は短いモノの、コード進行が明示されていてなおかつ不完全と言えども譜面が付いているこの教則本を購入する方が遥かに有用だと思うんでお勧めします(教則本の値段も国内盤CDを購入するよりかは安いデスシね)。

モチロン、菰口さんに興味は無い、また存在自体を知らなかった人でも、現代的なテクニカルフュージョンやプログレメタル系のプレイに興味のある人はこの教則本をチェックする事をお勧めします。


最後に、出来れば藤岡さんが存命の内に菰口さんと一緒に何かしらをやって音源や動画として残しておいて欲しかったなぁ、と強く思いますね、ハイ。

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